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イギリス便り

「いぎりす便り」(ドイツ万博編その2)
【再生紙で作られたリサイクル志向型の日本館】
日本にいたとき、私は日本館を作る過程をテレビで見て、驚きました。直径12cm、長さ20m、高さ15,5mの紙管440本を格子状に組み、それをいくつものジャッキで少しずつ少しずつ持ち上げ3つコブ形状のドーム型を作っていたからです。そしてそれが完成すると屋根の上を日本のとび職人たちがまるで忍者のように紙膜を張っていきました。当初紙膜は紙だけで作る予定でしたが、火災を心配するドイツの許可がどうしてもおりず、塩ビも使うことになったそうです。建築家の坂氏は環境の見地から紙だけでやりたいと強固に主張していましたが、認められませんでした。

主要建材である紙管は、SONOCO Deutschlandという製紙会社でリサイクルペーパーを使って作られており、万博終了後も同社に引き取られ他の物にリサイクルされるそうです。坂氏は阪神大震災の後の仮設住宅を紙で作ったことでも知られる建築家ですが、氏の基本姿勢として、期間限定のパビリオンのような建築物は紙のようにリサイクルしやすいものを使ってゴミになるものをできるだけ減らすということがあります。自然との共存という今回の万博のテーマに見事に沿ったものであったため、万博開始前からドイツのマスコミに多く取り上げられていたようです。

30分並んでようやく日本館に入ることができました。日本館のメインテーマは「地球温暖化防止ーCO2排出削減」です。入るとまっすぐドームの中心に進むようになっていて、そこでは「守るべき美しい地球」と「現在の地球の姿」が映し出され、迫り来る地球の危機を伝えていました。このメッセージゾーンで日本館のテーマをしっかり認識したあと、そのまわりの5つのアイランドで日本がCO2削減のためにいかに努力していいるかを紹介するようになっています。

まず、アイランド1では現在排出されているCO2を固定化する技術の紹介。例えば、光合成能力に優れ、砂漠に強い植物の研究開発や珊瑚礁のもつCO2吸収能力の研究を紹介していました。アイランド2に進むと、今度は日常生活の中で排出されるCO2を削減するための技術が見られます。例えばクルマ社会の現在では人や物の移動によって大量のCO2が排出されることから、移動を少なくするため、家庭と職場を高度通信網でつなぐなどの技術が紹介されています。

アイランド3では、化石燃料の代わりに地熱や波力発電など、CO2を発生しない自然エネルギーの利用や普及を紹介していました。日本政府が真剣に進めようとしている原発はさすがにここでは紹介されていなくてちょっぴり安心。

アイランド4は、排出削減の必要性を日本人がどのように認識し、それぞれの立場で行動しているかを紹介していました。ODAによる太陽光発電の普及活動や市民団体によるリサイクル活動などです。テレビモニターに、リサイクルに熱心な主婦が映り「私は服をリサイクルショップで買うようにしています」などと言ったり、古紙回収の様子が映し出されたりしました。

もし日本をまったく知らない人がこのパビリオンだけ見たら、こんなに真剣にCO2削減に取り組んでいる日本はなんて素晴らしい国なんだと思うだろうなぁと、考えるとなんだかムズムズとしてきました。知っている私でさえ、誤解しそうだから。

アイランド5に入るとそこはEXPO2005のPRゾーン。和紙で作られた自動車が内部から照らされ、ぼんやりとした光を放っていました。「1000年以上の伝統をもつ和紙と最新の技術的成果のひとつである電気自動車を組み合わせることで、人と自然の新たな関係を追求するEXPO2005を表現」したのだそうです。和紙自動車の前には「成功させよう 愛知万博」と日本語で書かれた小さな旗がはためいていました。

最後に、紙ひもを沼津垣(沼津市独特の垣根)の手法で編んだペーパーカーペットが敷いてあるというレセプションルームへ行きました。椅子の下に敷かれたカーペットは確かに紙ひも。本当は肌触りがいいはずなのに靴のまま踏まないといけないのが残念でした。

つづく・・・

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